債券の購入に「手数料」はかからないらしい…
今回は証券会社で株式と債券を売り買いする際の手数料について考えたい。特に、債券については、すべて(といっていいほど)の証券会社は「債券購入時の手数料無料!」をうたっているので、そんなウマイ話があるのか検討したい。
1.株式の売買手数料について
株を買ったことがある人なら分かるだろうが、一般的には株を売買するときは証券会社に手数料を払う。例えば、楽天証券では次のような手数料がかかる(楽天証券HPより)。
これによると、例えば、60万円分の株を買う場合、購入代金の60万円とは別に手数料535円を楽天証券に払う必要がある。これが証券会社の主な収入源である。そして、楽天証券を通して1日平均で約80万件の現物株式が売買されており、1回の取引額の平均が約50万円(2022年1月の実績)なので、楽天証券は現物の株式売買手数料だけで(かなり雑な計算であるが)、一日当たり
も稼いでいることになる。
このように株式の売買では手数料が明示されているので、どれだけの手数料を支払っているか一目瞭然である。
2.債券の売買手数料について
では債券の売買ではどうか?楽天証券のウェブサイトは下のような記述になっている。
債券購入には手数料がかからない!
と思ってよいのか?
楽天証券に限らずほかの証券会社でも手数料無料との記載があるけど、
じゃあ、債券の取り扱いで証券会社は儲けてないの?
そんなわけない。商売だから。
じゃあ、どこでどれだけ儲けてるの?
これが本題である。
3.債券とは
債券は株式と同様に市場で取引されていて、一般的には需要と供給のバランスで価格が決まっていることは株式と同じである。例えば、楽天証券が扱っているシティーグループの債券が次の条件で売られている。
これを次のように読む。
例えばこの債券を1000ドル分買うことを想定しよう。このとき、
①シティーグループから約4年後に1000ドルを受け取る権利がこの債券である。
②その権利は額面価格の104.56%で購入できる。つまり、1045ドル60セントで購入できる
というわけである。
しかしこれだけでは、4年先の1000ドルのために、今1045ドル60セントも払うことになり損することになるだろう。
③しかし、4年間利息をもらう。それが、年率4.60%である。これは、購入価格にかかるのではなく、額面価格(今の場合、1000ドル)にかかる。
そうすると年間の受取利息は、
である。つまり、現在1045ドル60セント払ったら、これから4年の間、1年につき46ドルの利息を受け取れるのである。そして4年後には1000ドルが支払われる、ということだ。
④まとめると、4年の間、1年につき46ドルの利息を受け取り、4年後に額面金額(いまの例では1000ドル)うけとる権利を売買しているのが債券の売買である。この例では、その権利の価格が1045ドル60セントである。
これを購入から2年後に誰か別の人(Yさん)に売れば、Yさんは2年後に1000ドルの支払いを受けられ、その2年間は利払いを受けられるのである。Yさんの購入価格はまた別の価格になっているであろう。
4.証券会社が勝手に債券価格を決めている!?
各証券会社は債券を売るときに実際の市場価格よりも高い値段で売っている。その差額が手数料のかわりである。つまり手数料無料といいながら、市場価格より高い値段で売って差額をポケットに入れているのである。
当然、商売だから儲けないといけないから、仕入れ価格より高く売るのは当然である。しかし、為替手数料とは違い、どのくらいの「手数料」を払っているか、購入者はすぐにわからない。
そうすると次に気になるのが、証券会社がどれだけ価格をごまかしているかであろう。証券会社では実際の市場価格を教えてくれない。これは、自身の仕入れ価格を教えているようなものだからだ。
そこで、チェックするべきなのが実際の市場価格である。日本の証券会社が実際の価格を教えてくれないなら、海外の証券会社のウェブサイトで情報を得ようと思う。
今回はドイツの証券会社 S-Broker で確認したい。楽天証券が売っているものと同じ債券を見つけたので下に掲載しておく。
これによると、2022年4月4日の14:04時点の市場価格であるが103.38%となっている(赤まる部分)。楽天証券はリアルタイムで債券の取引はできないし、ドイツとの時差もあるから多少の誤差はあるが、それでも楽天証券は1%以上は手数料をこっそり徴収しているということが分かった。
しかし、日本の証券会社も海外市場に直接アクセスできないので、海外の証券会社から市場価格より高い金額で購入して、それをさらに高い価格で日本の個人に売っているのである。だから市場価格との差額すべてが日本の証券会社に入るわけではない。
この「手数料」が高いか安いかは別として、実際はもっと安い価格で取引されているものを高く買っているということは認識しておかなければならないであろう。